【書評】人はムーアの法則を超えられるのか 機械との競争
- 作者: エリック・ブリニョルフソン,アンドリュー・マカフィー,村井章子
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2013/02/07
- メディア: 単行本
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先日googleの人工知能AlphaGoが世界最高ランクの囲碁棋士を破ったことがニュースになりました。囲碁でコンピュータが人間を上回ることは将棋やチェス以上に難しいと言われていたことから、驚きをもって報道されています。
この人工知能の開発者は、将来的には実社会においても適用されると話しています。
本書は機械が人間の仕事をいかに奪ってきたか、また今後どのように人の仕事を奪っていくのか、コンピュータの計算能力が指数関数的に増大するムーアの法則を下敷きに考察します。
人間は指数関数的な増大(倍々に増えていく)に対して感覚が鈍いようで、例えば複利の利息額の大きさや、紙を40回ちょっと折れば地球から月に届くような話について、いまいちピンとこないのです。
筆者は、この人間感覚のズレがコンピュータの能力向上を見誤る理由の一つだと指摘しています。前述のニュースはこれを証明することとなりました。
これだけを見ると悲観的になりますが、筆者は社会への処方箋を提示しています。過去の歴史では、機械に仕事を奪われたことで生じた人的余剰が、新たな産業・雇用・さらに価値観を生み出すことで次代への足がかりとしたというのです。つまりコンピュータや人工知能の発達が新たな雇用を産むので、そう悲観的になるなということです。
ところで人工知能というのは、他学問の知見を取り入れることで、過去何度かのブレイクスルーを経ているそうです。ハードの向上に加え、ソフト面での向上が進歩に大きく寄与しているということです。それを考えると今後の人工知能の進歩は、指数関数的というよりも、より離散的な進歩の仕方をとるのではないでしょうか。
これは非常に恐ろしいことで、人間社会はこの進歩に追従できるのでしょうか。筆者がいうような楽観的観測が、確かに今までの歴史のなかでは一理ある面もあります。しかし将来を考えると恐ろしくなります。
現在話題になっている自動運転車や自動医療診断ロボットなどは、おそらく我々が思っている以上に早いスピードで実用化されるでしょう。そのとき人はどんな価値観を新たに生むのでしょうか。私は技術の進歩以上にそちらに関心があります。
- 作者: エリック・ブリニョルフソン,アンドリュー・マカフィー,村井章子
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