【ゲーム】cities:skylines 自然な街の作り方 その9
前回
初回
近世編最終回 町を拡張する
江戸以前の町並みを舞台とした近世編も今回が最終回だ。長かった・・・
今回は新しい形式の町は作らない。代わりに新しい城下町を1つ作り、既存の町を拡張することとする。また最終回らしく写真で町並みを紹介してみたい。
街並みの紹介
次回予告 近代戦前編スタート
次回からはいよいよ時計の針を進め、明治~戦前期日本を下敷きとした近代戦前編をスタートする。平和で安定した江戸時代が終わり西洋化が進む中で、都市にも産業革命、文明開化、殖産興業といったキーワードが踊り出る。
鉄道網の整備や工業化による産業構造の変化など、街づくりゲームらしい要素が多く出てくるのもこの時代からなのだ。(写真は*1)
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【ゲーム】cities:skylines 自然な街の作り方 その8
前回
初回
港町の構造
今回は港町を作ろう。港町とは中世より、大量物資の運搬手段であった舟運の寄港地・中継地として、商品物資の流通拠点として重要な役目を果たした都市である。特に江戸時代に入り東廻り及び西廻り航路が整備されると、その寄港地となる港町は隆盛を極めた。
しかし明治時代に入り、鉄道が整備されると、物資移送は舟運から鉄道に移行し、舟運業は廃れ、港町、特に、川湊町は衰退した。*1
港町を作る
早速港町を作ろう。今回は簡易な港町2つと、大きな港町を1つ作る。簡易な港町は寄港地として発展した小さな港とする。
港町を大きくする
大きな港町は類似の地形があった函館を参考にした。港の規模が大きくなると交易の中心として街道等の内陸交通を引き込み、街はさらに繁栄していった。
とはいえその後鉄道輸送路の発展により、港町は衰退していくことになる。再び日の目を見るのは、輸出産業が発展し港のコンテナ化が進んだ高度成長期以降となる。
次回予告 未開発地の仕上げ
次回は未開発の部分を仕上げ、江戸以前編の最終回としたい。
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【ゲーム】cities:skylines 自然な街の作り方 その7
前回
初回
今回は寺内町
今回は寺内町を作ろう。江戸以前編も残り2,3回となってきて、いい加減ジャンクションとか鉄道とか作りたいがもう少しの辛抱だ。
寺内町とは室町時代以降に仏教寺院や御坊を中心に形成された自治集落である。宗徒や商工業者等が集住した宗教都市とも言える。 都市の特徴として、外部からの進入を防ぐために都市の外周部を環濠等で囲み、内部は寺社と町家によって区画された構成となっている。*1
このことから寺内町は畿内地方に多く分布している。また社会の安定した江戸時代には、近在農村からの農産物の集積地として、在郷町として発展した都市もあった。
寺内町を作る
寺内町の特徴といえば、なんと言っても防衛のために廻された環濠だ。まずは土木工事でこれを作っていこう。また内部には寺内町の中心ともいえる寺院群が連なる。
町並みを作る
寺院群を作ったら、次は僧兵や町人が住む町並みを整えよう。特徴は碁盤目状に整然と区画された町並みだ。環濠によって発展には限度があったが、効率的な運営がされた人工都市と言える。
次回予告 湊町
次回は湊(港)町を作る。江戸以降に列島東西周り航路が確立され急速に発展した街だ。
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【ゲーム】cities:skylines 自然な街の作り方 その6
前回
初回
城下町の成り立ち
今回は城下町を作っていこう。城下町とは近世において戦国大名等の領主の居城を中心に家臣や町人を集住させた、計画的に建設された都市である。特に江戸時代の初期には、領主の領国支配の明確化などの理由で、大規模な城下町が数多く作られた。そのため城下には異なる身分や職業別の町場が作られ、複合的な要素を内包した都市となった。*1
日本の多くの都市は城下町をルーツに持つため、参考にするサンプルが沢山ある。今回は海沿いに城下町を作るため、海を琵琶湖に見立てることで彦根城をイメージした築城をしていきたい。
楽しい造成工事
早速城下町を作っていこう。城下町は人工都市なので街づくりゲームと相性がよく、作っていて楽しい。特に造成工事は慣れるまでは面倒だが、コツを掴むとたまらない面白さがある。
城郭を作る
造成が完成したらいよいよ城郭を築こう。城郭は天守閣を擁する本丸を中心に、二の丸、三の丸で構成され、周囲には城壁や櫓、入り口の大手門などが配される。また城郭内には風光明媚な庭園などを設え、彩りある景色を形成する。
今回は城アセットなどを組み合わせ、上記の構成要素を意識しながら建設した。
真の主役 町割を作る
城郭を作ったら今度は町割だ。城下町は人工都市なので基本的には碁盤目状になる。また城下町の特徴として、意図的に丁字路や角字路、袋小路を多く設けることがある。これは外敵から侵攻を受けた際の防衛のためと言われている。一方でこれらの工夫は実際にはあまり役立たず、一種の流行りとして後発の城下町が取り入れていったという説もあり、なかなか面白い。*2
城下町のその後
その後多くの城下町は地域の政治経済の中心として発展し、県庁所在地となった都市が多い。街道の結節点であり人や物の往来が盛んなことに加え、歴史や文化的要因などもあり、地域の中心として発展していったのだ。
次回予告 寺内町
次回は寺内町を作っていく。寺内町は寺を中心に僧兵などが防衛のために作った人工都市である。少し地味だが環濠が作る異質な景観が特徴の町で、これもまた面白いのだ。
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【ゲーム】cities:skylines 自然な街の作り方 その5
前回
初回
今回は中世ヨーロッパ風
今回は12世紀ごろのヨーロッパ農村を作っていこう。
この頃のヨーロッパは封建制であり、街の様子もこの制度を土台としている。封建制とは領主と農奴の主従関係からなり、領主が行政や防衛サービスを提供する代わりに農奴は生産物や軍役を供出する*1。
また三圃式農業と家畜飼育が導入され、効率的な農村運営が富の源泉となった時代でもある*2。
農村を作る
農村の概要が分かったところで、早速作っていこう。今回の立地は広大な平地と河川を擁する地区を選んだ。まずは通りを一本引き、簡単な小麦畑と牧草地を作っていく。また対岸に領主の屋敷を作ろう。
要塞化するヨーロッパの街
さて農村が発展し人口や生産力が増してくると、それに伴い各種サービス需要も生まれてくる。村の中心には教会や広場が生まれ活気が出てくると、村も大きく育っていく。
また村の魅力が増すと外敵からの侵攻も増えるため、防衛手段を講じなくてはいけない。ヨーロッパは平地が多く自然の要害が少ないため、侵攻が容易なのだ。都市そのものが要塞的にならざるを得ないため、ヨーロッパの都市は同心円状に城壁が設けられることが多い。*3
中世農村のその後
その後これらの村は都市化していき、一部の都市は領主の支配から脱する自由都市となった。またギルドの支配や宗教改革による教会の影響力低下により、封建主義制度は徐々に時代に馴染まないものとなっていった。まさにヨーロッパ田園都市風景は時代の要請により出来上がった町並みなのだ。
次回予告 城下町
次回はいよいよこの時代のクライマックスと言える城下町を作っていく。城下町は多くの人や物が往来し、まさに現代の都市の原型といえる成長エンジンを持っている。大きく発展した街を作っていきたい。
【ゲーム】cities:skylines 自然な街の作り方 その4
前回
初回
宿場町の性格
さて今回は宿場町を作っていこう。
宿場町は江戸時代の初期に成立した形式であり、参勤交代制度の確立とともに発展した。街の中心には大名が宿泊する本陣が設けられ、その近辺には比較的身分の高い者が住まい、街道沿いに鰻の寝床のように家屋が立ち並ぶのが特徴だ。そして敵から城を守る関所としての役割もあるため、街の入り口には見付が設けられ、進撃を防ぐため道は入り組ませてある。
宿場町は地域ごとの特徴が薄く、小田原のような複合都市(宿場町+城下町)を除けば、上記のような共通の特徴がある。*1
宿場町を作る
さてゲーム上では宿場町はすぐ出来てしまうため、今回は複数の宿場町を作ることにした。ここでは下記について配慮した。
- 城と城を結ぶ街道沿いで、かつ山あいで他の形式に発展しない場所に設ける
- 街道の分岐点(追分)で、交通の要衝となる場所に設ける
地域の全体構成を考える
さて宿場町は街道沿いに設けられるため、街道全体の計画や地域全体の関係なども今回は考えていきたい。
初回は在郷町、前回は門前町ときて今回は宿場町3つを作り、現在は都合5つの地区がある。これに加えて今後は城下町、湊町、また中世欧州風の農地を作る予定なので、全体像は下記のイメージで考えている。
次回予告 中世ヨーロッパ農牧地帯
次回はいよいよ城下町、と思ったが必要人口が足りなかったため、中世ヨーロッパ風の農地を作ろうと思う。封建主義時代のヨーロッパ農地は、日本の町並みとは全く違う構造でありこれもまた面白いのだ。
【ゲーム】cities:skylines 自然な街の作り方 その3
前回
初回
門前町が作る町並みと景色
都市が成長するためには必ず中心となる成長エンジンが存在する。現代でいえば都会であれば駅が、地方であれば役所や病院、郊外であればイオンのような商業施設がそれにあたる。歴史上の街も同様に、そのエンジンが何かを意識すると街への理解が進む。前回の在郷町であれば農業を基盤とした加工施設などがそれにあたる。
今回作る門前町は社寺仏閣への参詣客がこのエンジンにあたる。なお神社の場合は鳥居前町と呼ばれることもある。門前町は参道沿道に参詣客を相手にする宿坊、商工業者が集住した町家が立地する沿道型のまちなみを構成している。このため神社仏閣の門前から延びる参道に沿って、まちなみが展開される場合が多い。*1
ちなみに類似の形式として寺内町があるが、こちらは環濠や土塁で街を防御する目的があり、比較的人工的に発生した形式である。一方で門前町は自然発生的に育った形式と言える。
寺院を作る
さっそく門前町を作っていこう。今回は三方を山に囲まれている落ち着いた土地を選んだ。まずは中心となる寺院だが、元からあるモニュメントではサイズが物足りないため、自分でアセットを配置した。また参道並木や門、神域林など構成要素を足していく。
参道沿いに広がる門前町
寺院が出来たら次は参道だ。参道沿いには参詣客を相手にする宿坊、商工業者が集住した町家が賑わう。また門前町は一定の自治が認められた背景から、僧侶、神主や彼らに奉仕する人々の居住区ができるなどして発展した。
変容する門前町
発展した門前町は宿場町や在郷町的な要素を内包し、複雑な機能を有する都市となる。また寺院の拡大や分派分裂によって、門外に新たな寺院が生まれ新門が現れる。需要拡大によって参道が複数出来ることもある。このように想像を膨らませながら街を広げていくと、より味わいのあるものとなる。
門前町のその後
その後現実の門前町は、戦国時代後期の天下統一過程の中で自治権が縮小された。とはいえ一定の自治権は認められたため歓楽街として発展する傾向もあった*2。一方で長野市のように都市基盤を拡張させ、県庁所在地として地域の中核となった都市もある。
今回作ったこの都市はこれからの再開発でどのような姿に変容するだろうか。とても楽しみだ。
次回予告 宿場町
次回は宿場町を作る。そしていよいよ城下町を作っていきたい。
【ゲーム】cities:skylines 自然な街の作り方 その2
前回
農業だけで食べていく
さて前回に引き続き、典型的な田舎町の元でもある在郷町を育てていく。前回はシステムの都合上工業地を作ったが、人口が伸びて農地を作れるようになったので工業地を壊すところからスタート。
工業地は8マス程度の敷地で10人以上雇用できる。一方で農地は32マスの敷地でたったの3人しか!?雇用できない。これではマップのほとんどが農地になってしまう。昔あったsimcityだったら農地だけでゲームが終わってしまいそうだ。とりあえず今の人口1100人が食える程度の需要メーターになるまで農地をばら撒いてみた。
農地が作る雑多な光景の必然
農地が成長のエンジンとなるため平地はすべて農地となる。一方で住居は開墾できない山際に作られることになる。このため通常の農地は中心街的なものが存在せず街道沿いであっても平地であれば農地が続くことになる。
これに対して在郷町はやや発展し、加工品現場や商人が集う中心的なものが現れる。しかし他の都市形態に比べ(例えば城下町の本丸のような)都市のエンジンとしての機能が弱く、また唯一的なものではない。よって中心がぼやけ雑多な景色となるため、ゲーム上でも特に意識せず淡々と(一度作ったものを破壊せずに)プレイしていると、自然と似たような景色になる。
在郷町から現代の都市へ
碁盤目派には気持ち悪い景色かもしれないが、これはなかなか美味しい展開だ。今後都市が近代化していく中で、おそらく中心を走る街道が舗装され、農地の一部は住宅や商業地になっていくだろう。さらに時代が進むと脇にバイパスが通り、賑わいの中心が移ることで、この街道は徐々に寂しい景色になっていく。いかにも現実にありそうな景色だ。
この街も現実の都市と同様に、過去の街の景色を下敷きとし、過去の香りが残っているような街を作ることを意識していきたい。とはいえこの街で時代の針を進めるのはもう少し先になるが。
次回 門前町
次回は寺院が街の中心である門前町形式の街を作りたい。なお在郷町形式のこの街も平行して拡張させていく。
【ゲーム】cities:skylines 自然な街の作り方 その1
cities:skylinesはとても優れた面白い街づくりゲームだ。ゲーム性はそこまで高くないが、自由で動的なシステムは創作の根源的な楽しさを思い出させてくれる。
しかしこのゲームを何周かプレイしているとあることに気づく。
また不自然なつまらない街を作ってしまった・・・
目次
自然な街ってなんなんだ
ゲーム上で自然な街(≒リアルな街)といっても色々あるが、大きく分けると2種類ある。1つは細部までこだわり、グラフィック的にも非常にリアルなもの。このタイプはゲームの規模的な制約やプレイヤーの根気などの問題で、都市の一部分をジオラマ的に再現しており、ミクロ的にリアルと言える。
もう1つは都市の構造的にリアルなもの。細部にはこだわらないが、都市全体の作りが自然であるため、地図上に落としてもリアルである。これは俯瞰的にリアルといえる。
前者のアプローチはyoutube上で素晴らしい動画が沢山上がっている。そこで今回は後者のアプローチで、複数回に分け自然な街を作ってみたい。
街づくりゲームの問題
cities:skylinesに限らず、ほとんどの街づくりゲームには大きな問題がある。それは自然発生的に街が作られないことだ。
自分で街を作るゲームで何を馬鹿なことをと思うかもしれないが、そもそも世の中のほとんどの街は自然発生的にできている。街づくりゲーム的に人工開発された都市は滅多にない。さらに言えばこのような都市ですら、大規模開発の後はまるで植物のように自然に育っていき、やはり自然発生的な要素が入り込まれていく。つまり街づくりゲームで自然な街を作ろうと思ったら、相当意識して考えないと難しいということだ。
自然発生的な現実の都市は、村落の形成から始まり、その名残を残しながら拡大発展していく。そこで今回は一つの都市を近世、近代戦前、高度成長期、平成以降の4つのシーズンに区切り、自然発生的に都市を作っていきたい。
詳細は下記ロードマップによる。
また研究資料などを参考にこの流れを擬似的に再現していこうと思う。具体には下記サイトを引用しているが、今後引用先を増やしていく。
http://www.nilim.go.jp/lab/bcg/siryou/tnn/tnn0723pdf/ks072307.pdf
http://toshi1.civil.saga-u.ac.jp/mishiman/03_lecture/T_HistoryUD/5_MiddleEUR/5_slide.ppt.pdf
さあ街づくりを始めよう
能書きはこの辺にして早速はじめよう。江戸以前の都市を作っていく第一歩となる、村落を形成させよう。このときのキーはなんといっても農業である。街づくりゲームで提示される初期産業は工業であるが、そもそもこれは計画都市的発想であり、発生学的には農業が産業の要となるのだ。
とはいえシステム的には工業が先で、農業は人口が増えないと作れないので(考えてみれば非現実的だな)、町外れに仮の工業地帯を作り、人口が増えて農業が作れるようになったら仮の工業地帯を削除することで対応したい。
ここでは国土技術政策総合研究所資料の都市構造例のひとつ「在郷町」をベースに形成させてみた。
見えてきた街の不自然さ
現在いる1100人のほとんどは仮の工業地帯で働いている。次回はこの工業地帯を取り壊し、すべてを農民にしたい。しかし今見えている農地で雇用できる人数は30人程度であり、この人口すべてを雇用するにはとんでもない農地が必要となる。それだけ工業が雇用できる人口が多いということでもある。
逆に言えば農業が産業の中心であったほとんどの現実都市は、これだけの農地を必要としていたということだ。早速だがこのギャップがゲーム上の都市が不自然になる理由の1つではないだろうか。現実は大量の農地を下敷きに徐々に工業化や都市化が進むのだ。
次回は農地を大量に敷き詰め、在郷町形式の集落を完成させたい。
次回
Cities:Skylines関連ネタ
毎週日曜20時からcities:skylines配信しています
【ゲーム】cities:skylines 俺の街 その1
cities:skylinesで今作ってる街である福岡市を紹介しようと思います。地名はランダムで決めてるのでわけわかんないことになってます。実際の福岡市と関係ないです。
2019.06.20 追記
この街のデータはゲームアップデートにより開けなくなったため、記事はここまでです。このゲーム唯一の弱点
福岡市概要
福岡市は複数の地域が時代とともに発展した街である。
かつては15世紀頃に興った望海坂城(のぞみざかじょう)周辺と、その後に発展した福岡城周辺が共栄していた。その後19世紀頃になると福岡城北部の湿地帯の開発が進み、また鉄道網が整備されたことで新市街地が発展した。20世紀に入ると新市街地周辺は大規模開発され、近辺に大工業地帯やベッドタウンが整備された。
望海坂城地区
望海坂城地区は最初期から存在する城郭都市である。穏やかな河口を中心に塩や香辛料の交易で発展した。16世紀に東北部で福岡城が興ると防衛のため郊外を城壁で囲い、現在の望海坂城区域の大枠が定まった。
その後も街は発展を続けたが、城壁がそれ以上の発展を妨げることとなった。また鉄道等の高速交通機関を域内に新設できなかったこともあり、19世紀以降は福岡城以北に中核都市の地位を譲ってしまった。
望海坂城の交通
望海坂城はその歴史から独特な交通網を形成している。
過去の時代は石畳の放射状道路と運河による水運が交通の中心であり、道路網は現在も交通の基盤として活躍している。
一方で運河による渡河は交通の要の地位を失い、観光用の遊覧船と一部の住民の生活の足にとどまっている。
近代に入り鉄道技術が発展しても、望海坂城地区はその都市構造から鉄道の敷設が難しく、高速交通網の構築に出遅れてしまった。このことが当地区の都市としての地位の低下に繋がってしまう。地区に鉄道網が整備されたのは現代になってからであり、都市の外周部に設けられた。
鉄道網は福岡市へ向かう中央線と、地区内外周部にアクセスする環状線が基盤となっている。特に環状線は城壁を再利用して構築したため、その独特な景色は望海坂城地区のランドマークとなっている。
都市中心部には鉄道の代わりに路面電車を張り巡らせている。かつて交易路となっていた幅広道路を軌道化し、望海坂城から福岡市中心部までを結んでいる。
また同様の理由で高速道路を域内に敷設することもできないため、鉄道と同様に環状都市高速が敷かれている。しかし長距離自動車道自体は街を分断する形で直線状に敷かれている。これは過去の大戦中に敷かれたもので、物流の効率輸送のため迂回することなくぶった切ったのである。現在は景観上の観点から大きな問題となっているが、一方で福岡市へ向かう大動脈としての機能を果たしている。
望海坂城の文化
望海坂城は中世の景色を色濃く残す歴史都市であり、多くの観光客が訪問する。北部のフェリー港が都市の玄関口である。入港すると都市が一望できるが、特筆すべきは夕暮れの特定の時間に入港すると、太陽と都市の街灯が相まって、燃える都市と呼ばれる全体が赤く染まる景色を堪能できる。
都市全体は厳しい景観規制が敷かれ、全体的にルネサンス様式で統一された町並みとなっているが、ゴシック建築の時計塔や庁舎が合間に見える。
都市中央の広場は、かつての市民政治の中心であった。広場での活発な議論の末に、広場の先に鎮座する城へ上奏奉られていた。現在の政治の中心は川の南対岸の地区に移り、城は象徴的な意味のみを持つようになった。
まとめ
望海坂城地区は城壁に開発を阻まれ、都市の拡張ができず、近代化に取り残された街であった。しかしそのことで無秩序な都市の拡大を防ぎ、行政効率を高めることに成功し、また地域の自然を壊さずに調和した町並みを形成できていることから、近年は再評価の流れもある。望海坂城地区は歴史を土台とした味わい深い都市であるのだ。
次回
次回は福岡城地区について紹介します。天然の要塞に守られた歴史をもつ、自由な風土の都市です。
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【投資】投資のやり方 理屈編
始め方編はこちら
はじめに ~なぜ理屈を知る必要があるか
世界の株式資産価値は、大きな戦争や金融危機を乗り越えて200年間右肩上がりを続けている(下図)。よって暴落を恐れず株を持ち続けていれば、その利益に預かれる。しかし暴落があると心理的に不安になるため資産を売却してしまうことが多く、せっかくの利益を逃してしまうことが多々ある。そこで心理的な支えとして、理屈を知っておく必要がある。
大切なこと ~リスクの把握
個人で投資を行う場合に最も大切なことは、どれくらい下落する可能性があるかを把握することである。大きな暴落があった際に、生活費等の支出によって不本意に資産を売却することを避けるためである。一方でリスクをとればリターンも大きくなるため、自分が許容できる最大限のリスクは取るべきである。
投資対象 ~企業・地域を分散させる
リスク把握には、複数の企業・地域を投資対象とした分散投資とする必要がある。個別の企業や地域に投資すると、不祥事や市場環境の変化があった際に想定外の下落が起きる可能性がある。分散投資をすることで予期せぬリスクを抑えることができる。
分散投資を行う場合、投資信託のインデックスファンドを購入するのが現実的。若干の手数料を支払う必要があるが、手軽に数百~数千の企業群に分散投資ができる。ファンド選びで最も大切なことは、手数料の安いものを選ぶこと。過去の運用成績の良し悪しは将来の良し悪しを保証しないのに対し、手数料は確実なマイナス要素であるからだ。
投資手法 ~資産を持ち続ける
株価変動は短・中・長期の動きがあり、それぞれの値動きに応じた投資手法がある(下図)。しかし個人で投資を行う場合、長期の値動きに応じたバイアンドホールド(一度買ったら売らない)で行うのが現実的だ。短期値動きで売り買いする場合、1日中値動きを見ていなければならないし、中期の場合は企業分析や各国金融政策の予想などを行わなければならない。これは普通の人には不可能だし、そもそもできる人がいるのかも怪しい。
参考図書
①水瀬ケンイチ お金は寝かせて増やしなさい
個人投資家による解説書。実体験に基づいた暴落時の心境などがとても参考になる。
専門家による解説書。このまとめの殆どはこの本を参考にしている。
古典的名著。難解な部分もあるが、長期投資の有用性の理論的背景を抑えることができる。
ウォール街のランダム・ウォーカー〈原著第11版〉 ―株式投資の不滅の真理
- 作者: バートン・マルキール,井手正介
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2016/03/10
- メディア: 単行本
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【投資】投資のやり方 始め方編
友人が投資を始めたいというので、資料を作った。せっかくなのでここでも公開しようと思う。手続き等を含めて2週間弱でできると思う。
A4表裏1枚で説明。始め方編と理屈編に分けた。表はとにかく何をすればいいのかだけ書いた。理由とか説明は何もなし。裏は理論とか考え方を説明。
なお投資に詳しい人から見ると異論はあると思うが、迷いをなくすためにあえて決め打ちして書いている。別に楽天証券を使って取引してもいいし、eMAXIS Slimを買ってもよい。
追記 18.03.05 再編集しました
理屈編はこちら
以下資料 始め方編
投資計画
①上図を参考に投資に回せるお金Zを計算する。
②上図のXは現預金(1000万まで元本保証)、Yは国債(同保証)、Zは株式投資へ配分する。
③大暴落と予定外の家計支出が重なった場合、3)の資金(+保険など)で対応することを想定している。
④計算した結果Z<0であった場合は投資をすべきではない。許容できないリスクは取るべきではない。一方でリスクを取った分だけリターンが見込めるため、許容できるリスクはどんどん取るべき。
⑤X,Yが分からない場合、自分の年齢と比例させる方法がある。例)30歳なら資産の30%をX+Yとする
入金手続き
①SBI証券(ネット証券)で証券口座(特定口座)を作る。1週間程度かかる。必要なものは免許証、マイナンバー通知書。
②同サイトから経由し、住信SBIネット銀行口座を作る。
③住信SBIネット銀行口座へ上記YとZを入金する(金融機関のATMで行う)。
④入金した資金をSBIハイブリッド預金へ振替する(ネット上で行う)。
購入
①個人向け国債変動10年をYの全額購入(1年間引き出し不可)
②ニッセイTOPIXインデックスファンドをZの1/10購入
③ニッセイ外国株式インデックスファンドをZの1/10購入
④Zの残金が8/10残るが、下記を参考に適宜購入する(あとは勉強して・・)。
今後
①SBI証券でiDeCo口座及びつみたてNISA口座を開設する。特定口座よりも下記優遇があるため、より優先して使うべき。
②口座開設には時間が掛かる(iDeCoの場合3ヶ月程度)ことに注意。
大切なこと
①暴落しても売らない
②税金および手数料を少しでも安くする
③参考書を読む
【ゲーム】街づくりゲーム Cities:Skylinesの話
街づくりゲームが好きで、SimcityシリーズやA列車で行こうシリーズを昔からよくプレイしていた。この手のゲームは人口を増やしていく攻略的な面白さと、作った街を見渡すジオラマ的な楽しみがある。
私の場合、小学生の頃はSimcityで人口を増やすことに熱心だった。しかし、アルコロジーをマス目に添って埋めていく作業中に、ふと何やってんだろと虚しくなり、この手のゲームに攻略的な面白さを求めなくなった。
広大な土地で自由な開発を
そうなるとジオラマ的な楽しみ方になるわけだ。しかしこれらのゲームは容量の都合で、開発するできる面積があまり大きくないという弱点がある。よって住宅地のすぐ隣に工場だの発電所があったり、不自然に小さな学校や公園になってしまう。挙げ句の果てには空港が密集地に囲まれていたりする。
広大な敷地で自由に街づくりをしたい。Simcityプレイヤーなら誰もが考えることだ。これを叶えてくれるのがCities:Skylinesというゲーム(PCゲーム)なのだ。
このゲームは最大で18km×18km=324k㎡の面積を開発できるから凄い。これは名古屋市くらいの面積に相当するのだ。ここまでくると2、3個の都市を並行して作ることもできるし、その間に広大な農地を広げることもできる。空港用地のために巨大な埋立地を作ったり、スパゲッティのように絡み合うアメリカのハイウェイを作ることもできる。
碁盤病とSimcity
ところでSimcityのような街づくりゲームには「碁盤病」と呼ばれる病気がある。これは道路を直線交差に引くことで、どの部分も画一的な見た目になってしまう都市を作ってしまう、よくある現象だ。しかし京都や札幌のように碁盤の目都市があるのだから、別にこれは悪いことではない。現実の街は、碁盤の目にしたくても出来ないからしないのである。妥協の産物である。
しかしゲームではプレイヤーは神である。こんな妥協は必要ない。効率的な街を作ろうと思ったら、土地を均して碁盤の目で道路を引いて、建物を敷き詰める。これでよい。
のだが、これが実によくない。こんなことをしているとこの手のゲームは1日で飽きてしまう。アルコロジーを敷き詰める小学生と何も変わらない。
街づくりは常に妥協の連続
ではどうすればよいのか。それは「妥協のタネ」を作り出すことである。 例えば現実に照らして金の掛かりそうなことをなるべく行わないことは、よいアイデアである。整地をあまり行わないことや、架ける橋の数を減らすなどが考えられる。これだけで道路は等高線に沿って曲線的になり、橋の周りは渋滞が発生する。
他にも方法はある。妥協のタネを妄想することだ。私はSimcity時代に、ある程度都市を開発したら適度に災害を起こして再開発を行っていた。ここで大切なのは、災害跡を残しておくことだ。地震で割れた断層に沿って新たな道路を引き、隕石のクレーター跡は自然保護区として周囲を囲う。津波が起きれば海岸線を嵩上げし、大洪水が起きた場所は水難の相として、建物を建てない。
ここまでくるとゲーム上でタネを引き起こす必要もない。立ち退きを拒否する地主のせいで変に曲がってしまった道路。工事を行ったら遺跡が出てきたせいで開発が止まってしまった市街地。街なかの1等地がすべて工場立地になってしまった企業城下町。タネはいくらでもある。外を歩けばよいだけだ。ブラタモリをみるだけでもよい。
妄想の舞台としてのCIties:Skylines
こんなプレイをしていると、作っている都市の様々な場所に愛着が出て来るから不思議だ。それは架空の場所に意味が内包されたからだ。しかもこのゲームは住民1人1人が目的を持って動いている。それが可視化されて見えるのだから、まさに動くジオラマである。
ジオラマとしての街づくりゲームは 、つまるところ妄想の舞台だ。Cities:Skylinesにはそれを成立させるための様々なシステムがある。沢山のユーザーが作った自作の構造物やゲームシステムを導入できるModと呼ばれる仕組みだ。これを使えば巨大な建築から細かいパーツ(例えば自動販売機とか)までを自由に街なかに配置できる。
このゲームは気の遠くなるほど大量のパーツがユーザーによって作成されており、導入できる。しかしこんなものはゲームの面白さがわかったあとで、やりたい人が少しずつやればいいのだ。何故なら初期状態のゲームであることもまた、都市の「妥協のタネ」となるからだ。
都市は生きている
このゲームの人や車、電車や飛行機、そして動物に至るまで、それぞれが意思を持って動いている。大量の交通を処理するジャンクションや、大勢の人が行き交うターミナル駅を眺めているだけでとても楽しい。それはまるで子供の頃、蟻の観察をして眺めているかのようだ。
また動いてるのは人だけではない。街自体が環境に応じて変化するのだ。公共サービスの行き届いた文教地区は高級住宅街となり、交通が不便な商業地は品不足と客不足で廃墟となっていく。まるで都市そのものが生きているかのようだ。
別の地区をずっと開発してる時に、何となく数10年振りに(ゲーム内時間)昔開発した地区を見に行く。するとそこには記憶していた景色は無くなっていた。閑静だった住宅街は、独居世代の増加によって中層アパートが乱立し、かつて繁栄していたオフィス街は、中核世代の大量退職により閑散としている。他地区から流入する交通量の増加によって渋滞が多発し、ニュータウンは放棄されてしまっていた。
それはまさに、昔住んでいた街に数10年ぶりに訪れたかのようだ。昔の好きだった景色は無くなっているが、新たな景色が(自発的に)生まれているのだ。
おわりに
このゲームは64bitのPCがあれば動く。PCの性能もそんなに必要ない(都市の規模によるが)。そして何と言っても3,000円程度で手に入る。環境のある方はぜひプレイしてみて欲しい。特に普通のゲームに疲れた大人にとって、思わぬ楽しみを与えてくれると思う。
そして既にこのゲームを持っている人は、理想の街を追求して1からやり直し続けることもよいが、是非1つの街をプレイし続けてほしい。日本風の街を作っていたが、ふとヨーロッパ風の街を作りたくなった。だったら今の街の空いたところに移民街を作ればいいのだ。その境目には新たな雑多な風景が広がることになり、妥協のタネがまた1つ生まれるのだ。
そうなると都市は無限に広がっていく。そして高性能のPCが欲しくなる。金が無くなっていく。しかしそれで良いのだ。なぜならCities:Skylinesは最高のゲームなのだから。
Cities:Skylines関連ネタ
毎週日曜20時からcities:skylines配信しています
【ピアノ】 ピアノ音源pianoteq5 standard が素晴らしすぎる
以前までpianoteq5 stageをピアノ練習時の音源で使っていた。これをこの間standardにアップグレードしたが、これがとても素晴らしい。位置づけとしてはstageが導入を考えてる人向けでstandardが慣れた人向けっぽいのだが、最初からstandardで買っていいレベルで音が違う。
stageからstandardにアップグレードするといじれる設定項目が増える。この中で「design」項目の「sympathetic resonance」(弦の共鳴に関する部分)を3.5程度に上げる。またVelocity(ピアノの強弱との整合を取る部分)について上の図のように調整する。調整の仕方はピアノによると思うが、kawai ca65では結局直線にするのが一番しっくりきた。
で、これだけでstageの音とは激変する。低音域はかなり暴れ調子になり、丁寧に弾かないと聴けたものでない音になるのはグランドピアノそのものだ。一方で高音部は天に昇るような音になり、見違えるようだ。共鳴音がかなり強くなるため、ダンパーを踏みっぱなしにすると音が濁りだすなどは、電子ピアノの音ではありえない。グランドピアノの音そのものだった。
同じpianoteqでここまで変わるとは思わなかった。stage使ってる人はぜひstandardにアップグレードするべきだと思う。
【備忘録】続 電子ピアノkawai ca65 鍵盤が重くなるので自力で修理する
※保証が受けられなくなるので修理は自己責任でお願いします
問い合わせがあったので、以前書いた電子ピアノの修理方法について、詳細にまとめました。なお、修理後の打鍵感覚が悪くなるかもしれない旨を以前書きましたが、現在は特に不満を感じていないです。むしろ弱音の感度は良くなった感じがします。
以前の記事
(1) 鍵盤をはずす
① ピアノの背中の上縁にあるネジ4つを外す
② フタを左に寄せて、手前に引くとフタが上に持ち上がる(ちょっとコツがいる)
③ 歯車を調節してスライド式の内蓋を手前に起こす
④ 内蓋の歯車と噛み合っていた黒い部品をはずす(右側のみでよい)※トップ写真は黒い部品を外した状態。
⑤ 横に長いスピーカーをはずす(KAWAIのロゴが入ってるやつ)
※④で黒い部分を外したのはこの部分を外すため。
⑥ 鍵盤を上に持ち上げると簡単に鍵盤が外れます
説明が難しいですが、やってみると意外と簡単に外せます。
(2)フィルムの修理
用意したもの
・ポリエチレンフィルム
(日東 超高分子量ポリエチレンNo.4430 0.25mm×19mm×10m)
・瞬間接着剤
・油性ペン
・ハサミ
・ピンセット
① フィルム部分をピンセットを使って剥がす。この部分は3層構造で、フィルム、粘着層、フェルトとなっている。このうちフィルムと粘着層を剥がす。フェルトは剥がさない。
下の写真はフィルムがずれた状態になったもの。こうなると粘着層が露出し、べたつきで鍵盤が固くなる。
② ポリエチレンフィルムを所定のサイズに切り取り、接着剤でフェルトの上に貼り付ける。
サイズは12mm×12mmまたは12mm×9mmのいずれか。鍵盤によって異なる。
奥の鍵盤は貼付け前。手前は貼付け後。このまましばらく乾かす。
(3)アクションハンマー修理
用意したもの
・無水エタノール
・ウェス
・使い捨てゴム手袋
・計量カップ
① 無水エタノールを計量カップに入れ、ウェスに染み込ませる。
② アクションハンマーの金属部をウェスで磨く。なおyoutubeでは綿棒を使って磨いている動画があるが、やっていることは同じ。ただし粘着度合いがひどい場合、綿棒では粘着物を拭き取れないため、ウェスでしっかりと磨く。
(4)鍵盤を戻す
① 鍵盤をもとの場所に戻し、アクションハンマーを挿入する。ハンマーは水平に奥に押し込み、ぶつかったところで先端を下に潜り込ませる。(ちょっとコツがいる)
ここで失敗するとフィルムが変形し、また(2)からやり直しになるので慎重に行う。
(5)終わりに
作業自体は3時間くらいで終わります。ちょっと大変ですががんばってください。修理してから今のところ不具合は特にないです。